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鳥取地方裁判所 昭和36年(行モ)1号 決定 1961年12月16日

申請人 鳥取県地方労働委員会

被申請人 沢タクシー株式会社

主文

被申請人は、被申請人を原告とし申請人を被告とする当庁昭和三六年(行)第二号不当労働行為救済命令の取消請求事件の判決が確定するまで、申請人が鳥取県地方労働委員会昭和三六年(不)第二号事件についてなした不当労働行為に対する救済命令に次の限度で従わなければならない。

被申請人は申請外沢タクシー株式会社上井営業所労働組合組合員矢田良行に対し本決定が被申請人に告知された日より右矢田が原職に復帰するに至るまでの間同人が原職において受ける筈であつた賃金(昭和三六年三月二九日を基準日として労働基準法第一二条に基いて算出した額)及び賞与を、その受けるべき筈である日に支給すること。

(裁判官 岸本五兵衛 今中道信 杉本昭一)

〔参考資料〕

緊急命令申立

申立の趣旨

右当事者間の御庁昭和三十六年(行)第二号不当労働行為救済命令の取消請求事件の判決確定に至るまで、申立人が昭和三十六年八月二十八日被申立人に交付した命令のうち

被申立人は申立組合員、矢田良行の昭和三十六年三月三十日付退職を取消し、同人を同日付をもつて原職に復帰させ、かつ同年同月二十九日より原職復帰に至るまで同人が受ける筈であつた賃金諸給与相当額を支給しなければならない。

との部分につき、緊急命令を発せられんことを求める。

申立の理由

一、倉吉市上井町一丁目十一番地沢タクシー株式会社上井営業所労働組合より別紙添付の不当労働行為救済申立書記載の理由に基き昭和三十六年四月三日申立委員会に対し不当労働行為救済の申立があつた。

二、申立人委員会は鳥取県地労委昭和三十六年(不)第二号不当労働行為審査請求事件として之を受理し、昭和三十六年四月六、七日労組法第二十七条第一項による調査及び同月二十五日より七月二日迄の間六回の審問を行い、同月二十二日、八月十日、同月十九日に公益委員会議を開催して合議の上八月二十八日労組法第二十七条第四項の規定に基き被申立人に対し、

1 被申立人は申立組合員、矢田良行の昭和三十六年三月三十日付退職を取消し、同人を同日付をもつて原職に復帰させ、かつ同年同月二十九日より原職復帰に至るまで同人が受ける筈であつた賃金諸給与相当額を支給しなければならない。

2 被申立人は申立人組合員に対し貸切、臨時など所定外勤務のバス運行乗務につき他の従業員と差別取扱いをしてはならない。

3 申立人の損害賠償請求の申立はこれを却下する。

4 申立人その余の申立は棄却する。

との命令書を交付した。

三、然るに被申立人は右命令書中(1)(2)項の認容部分を不服とし、御庁に対し昭和三十六年九月二十二日申立人を被告とし右命令の取消しを求める旨の行政訴訟を提起し、該事件は御庁昭和三十六年(行)第二号事件として繋属中である。

四、然るところ右訴訟の終結を見るには今後相当の日時を要し、その間申立人委員会の発した右救済命令1項の内容が早急に実現されないとすれば、賃金を唯一の収入源とする被救済者矢田良行とその家族の生活は甚しく窮乏するに至ることが明らかであると思料されるので、昭和三十六年九月三十日第一二六回公益委員会議において、申立委員会の発した救済命令のうち、前記申立の趣旨掲記部分につき労組法第二十七条第七項の規定に基づく緊急命令の申立をなすことを決議した。

よつて本件申立に及んだ次第である。

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